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15年前のお話

15年前のお話
15年前的谈话
高校生の頃から学校の先生を目指した。
特別に心に残る先生に出会ったわけでもなかった。
逆にそれだから憧れたのかもしれない。
大学を出て夢は現実のものとなり僕は憧れの中学校の教壇に立った。
それから16年間。
もがきながらも先生を続けた。
でも、僕は挫折して先生を辞めてしまった。
理由は一言では語れないけど
精神的にけっこう追いつめられて
「死んじゃうよりは辞めた方がいい」
という後ろ向きの理由だった。
僕を苦しめたものの一つに校則の指導があった。
僕は日頃の行いが悪かったせいか赴任した三校がすべて「荒れた」学校だった。
こうした学校では勉強を教えることよりも「生活指導」に日々の多くの時間を割かれる。
「たばこ」に「シンナー」「ケンカ」に「いじめ」「授業妨害」に「万引き」とバリエーションには事欠かない。
自慢にはならないが16年の間に「殺人」以外の非行には全て遭遇した。
だが、こうした問題行動の指導はきついにはきついが割と心に迷いがない。
だれがどう見ても「いけないこと」だから、体張ってでもぶつかっていくことができるのだ。
そうした中で僕は「校則指導」に悩んだ。
具体的に1つ挙げれば「頭髪」の指導である。
「茶髪」はおそらくほとんどの中学校では禁止になっていることと思う。
「中学生が茶髪にするなんてとんでもない・・指導するのが当たり前だ」
「きまりを守ることを教えるのが学校、先生の役目だ」
「生徒に安易に迎合するな」
これは正論である、正論には誰も勝てない、でも、僕と同じように悩んでいる先生はきっといるはずだと思う。
目の前に茶髪の生徒がいる。
校則違反だ。
この生徒は茶髪を除けば何も悪いところがない。
勉強もちゃんとするし、当番もまじめに行う、部活でも活躍しているし友達も多い。
両親も頭髪以外のことは全て協力してくれる。
でも校則に違反しているので注意しなければならない。
無理やり染めることはできないので話をして説得する。
本人が了解し、家庭の了解も取れると主事室に連れて行き黒染めのヘアカラーで髪を黒く染める。
あらかじめ学校にはヘアカラーが用意してあるのだ。
この時、僕はいつも自問自答しながら指導をしていた。
(決まりだから守らせなくちゃだめだ)
(一人の違反を見逃せば他の子供たちも崩れていく)
大義名分を掲げながら生徒の髪を黒く染めた。
その反面いつも心の中で矛盾を抱えていた。